妖魔04~聖域~
民族衣装を着用した少女は、相手を殺傷するほどの近接攻撃は持っていない。

怯えて何もしてこないのが証拠だ。

攻撃を躊躇った俺は、少女を逃がすまいと抱き上げる。

「コラア!はなせー!」

もがいて逃れようとするが離す気はない。

少女が死ぬ事を怖がらないのであれば、地割れを使って俺を巻き込んでもおかしくはない。

能力を使わないところ、死にたくはないという事だ。

「殺されるぅぅぅ!」

「殺しはしないが、後でお仕置きだ」

敵は平気で殺してもいいけど、自分は死にたくない。

死にたくないという気持ちは解るが、平気で殺そうなんていう考えはどこから沸いて出て来たのか。

まともな環境で育ってこなかったのか。

背後から炎の弾が飛んできている。

少女を片手で持ちながら、動き回る。

やはり、同じように敵の後ろを通りながら逃げているため、燃やされる妖魔も多数いる。

地割れがない分、先ほどよりも楽になったといえる。

「俺といたら殺されるんだ。自分の能力でも使って自爆したほうがよっぽど潔いぜ」

「ヤダヤダヤダ!お前が離せばいいんだ!」

泣きながら訴えてくるものの、離す気はない。

「離したら、逃げてまた地割れを使うんだろ」

「当たり前だ!敵なんか死んじゃえばいいんだ!」

「あのなあ、おっと!」

放たれた炎をサイドステップで避けるが、その先に筋肉質な妖魔が待ち構えている。

筋肉妖魔が上段蹴りを片手で受け止めるが、しゃがみ込んで踵で足払いを放つ。
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