妖魔04~聖域~
少女を負ぶって円から抜け出そうとするが、出口が塞がれる。

「こいつもやっちまえばいい」

「今なら何の能力もないただの人間だ」

「今なら出来る」

雑音が聞こえる。

頭を掻いて考えた。

「余計なことを言ったお前とお前とお前、死刑な」

相手が動き出す前に指をさした三人の男の元へとダッシュし、膝蹴り、肘うち、側足蹴りをぶつける。

次の瞬間、闘いの火蓋を切るかもと思ったが、何も起こらない。

当たりは静まり返っていた。

「君達はそんなに争いごとが好きなのかね?」

少年の声によって全員がバツの悪そうな顔をする。

「感情をある程度抑制出来ないというのは不憫でならないね」

何食わぬ顔をして全員が散らばっていく。

先にはラインと01の姿がある。

おばちゃんの姿もあるところ、呼びにいったのだろう。

「野放しにすれば結果はそうなるだろうね」

「もう少し気をつけるべきだった」

少女は研究所の者ではない。

馴染むどころか、初めの一歩すら踏んではいない。

同類であっても認められることはなく拒絶され、最悪な結果を生み出した。

背中から泣き声が聞こえてくる。

「痛い、痛いよ」

「怪我、すぐ治してもらうからな」

自業自得とも言えるが、今は言わないでおく。

ラインを通り過ぎて、お吟さんの下へ辿りつく。

「お吟さん、こいつの怪我見てやってくれ」

「えー、もち肌」

お吟さんはロベリアの肌を離したくないようだ。

「頼むよ」
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