妖魔04~聖域~
番号で呼んでいるものだと思っていた。

「彼女は自分の名前が好きだったようだ。何度、調整を行って番号で呼んでもこちらを向かなかった」

「誇りは汚せないか」

「私も驚いたよ。だから、彼女は名前を呼ばない限りは相手にしない」

「何で誇り高き女の子がここに来たんだ?」

「彼女の父親と母親の命を盾にね」

「おいおい、無理矢理じゃないか」

酷く、レベルが下がったような気がする。

「冗談だよ。彼女の家にはお金がなかった。資金を回して上げたのさ」

「興味のためなら何でもするのかよ」

「彼女の親も納得してくれた。だが、昨日も言ったが、彼女はすでに研究所にはいない」

「帰したのか」

探し物が増えてしまったようだ。

「データは取ったからね。希望があるのならば、出て行くことも可能なのだよ」

「自由だな」

「大半はいい暮らしをするために出て行かないがね」

彼女は母なる大地を求めたというわけか。

「楽な生活を出来るようにするためだけに大半に良い暮らしをさせているわけじゃないだろ」

「彼らの知らぬ内に色々と役に立ってもらっているさ」

それ以上は聞く気がない。

今は彼女のことが気になる。

「ちょっと待て。剣になっているのに、どうやってここから出て行くんだよ?」

「剣にはなっていない。彼が魔剣とするならば、聖剣に位置するというだけの話であってね」
< 134 / 330 >

この作品をシェア

pagetop