妖魔04~聖域~
「変身時に感情を一定に保たなければ、暴走が起こるのか?」

「常に同じことが起こるとは限らない。それが世というものだよ」

意識を失った時に聞いた声。

ロベリアの奥底に潜んだ誰にも明かすことが出来なかった抑圧された感情。

感情の高ぶりが二人の間にある弁を吹き飛ばして、流れてきたのだろう。

誰にだって言えない気持ちがある。

勝手に知ってしまったわけだが、余計な混乱を招くから言わない。

「過去に憎悪を焚きつけるようなフラッシュバックがあったわけか?」

研究所で心身が離れている理由が何となく読めた。

「彼女は一度だけ自分の村に戻った時、記憶のフラッシュバックを起こした」

「じゃあ、村は」

「村の人間達のことを聞きたいかね?」

「想像はつく。だから、体とコアを引き離したってことかよ」

「契約妖魔のコアに適した環境が施設に出来ていたからね」

「そうか」

ロベリア単品でいたとしても危険性はあるというわけだな。

もし、彼女の記憶がフラッシュバックした時、止める手立てはあるのだろうか。

ロベリアや自分自身を。

しかし、何で記憶がないのに村に行ったのか。

可能性は一つ。

「ラインが村に連れて行ったのか?」

「何故そう思うのかね?」

「自分の研究の対象の変化が欲しかった。別の記憶が刷り込まれているにしろ、記憶は存在している。刺激を与えれば何かしらの変化があると判断して連れて行った。それに施設が出来ていたから、何か起こった場合には切り離せば良いと考えていた。そうだろ?」
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