妖魔04~聖域~
「親と共に暮らしている彼女を見つけたのは日本だったがね。移住していなければ日本にいるはずだ」

「そうか」

母国に早く帰れる事になって、少しだけ嬉しくなった。

日本、俺が高校生まで生きていた国。

四年、一度たりとも帰ったことはなかった国。

俺は帰ることが出来る。

子鉄、美咲、冬狐は一体何をしているのか。

きっと俺の事を覚えていない。

それでも良い。

懐かしい思い出に浸っていると、不思議そうな顔のロベリアが俺を見つめている。

「王子様、夢の国は心を癒す?」

「そうだな」

故郷を追われた彼女の前で喜びすぎるのも不謹慎だと思う。

でも、思いつめて気を使わせるのも嫌なので素直に答える。

「色々な文化の混じった良い場所だよ」

「ワタシにも感じられる?」

「見たことない物もあると思うぜ」

ロベリアは手を組み、思いを馳せているようだった。

「お吟さん」

「んー?」

お吟さんはリンゴを齧りながら、青空を眺めている。

「俺と一緒に日本に帰って欲しい」

旅は一段落がついたといえる。

正直なところ、俺は吟と離れるのは嫌だった。

でも、気が変わって自由な旅路へと戻ってしまうのではないのだろうか。

日本には旦那であるジジイもいる。

日本にいない理由はジジイなのかは解らないところだがな。
< 141 / 330 >

この作品をシェア

pagetop