妖魔04~聖域~
時を越えて、成長を遂げた女が魔草青汁を飲んでいた。

「質問は一つ」

何故、扉の存在を知っているかなどどうでもいい。

「扉の鍵はどこだ?」

「ここ」

ポケットから取り出したのは小さな黒鉄の鍵。

「よくやったな」

起き上がった燕は鍵を分捕る。

「おい」

「気にするな、お前のために先頭きって入ってやる」

「後で扉の鍵を閉めたら、常世に送るからな」

「大丈夫だ。私はお前の事が好きだからな」

眼鏡をかけたまま、扉の鍵を開けて中に入る。

入室後にすぐ閉めようとしたが、新聞の勧誘並に足を前へ突き出して、扉の隙間からけり倒す。

「くだらない事をするな」

床で寝ている燕を放置して、扉の先を見る。

何ら変哲もない世界で、床には無数のブロックが埋め込まれており、いくつかの廊下が枝分かれしている。

見る限りでは、罠など仕掛けられていないようだ。

緊張感はない。

あるのは、早く外界へと出たい気持ちだけだ。

里が嫌いというわけではない。

世界を滅茶苦茶にするような人間が嫌いなだけだ。

人間の進化は早い。

誰かが止めることもなく、歯車は回転し続けた。

その結果、歯車にガタが来て、ぶっ壊れるというのがオチだ。

ぶっ壊した先には何がある?

暮らせない荒野が広がっているだけだ。

荒んだ人間の心を表しているかのようだ。
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