妖魔04~聖域~
大きな音はしていないせいか、教室から顔をのぞかせる奴はいない。

しかし、飛鳥が邪魔だ。

引きずってはいるが、体重を抱えているも同然であり、疲労のたまる速度は倍以上だ。

飛鳥はまだ目を覚まさない。

ここでは負けられない意地がある。

改革派として、人間の世界に派遣された以上は動かなければならない。

動くという事は、情報を漏らしてはいけないということだ。

負ければ、情報が漏れる。

口に出さなくても、情報を引き出す方法はいくらでもある。

「負ける?ありえないな」

道はある。

避け続けてはいるが、俺は見つけたのだ。

勝利を導く場所まで辿り着く。

「さっさと死ね!」

ナイフを胸に突き刺すために、尖端が垂直に突進する。

攻撃を避けるつもりはない。

何故なら、背後にあるモノを握力で掴んでいるからだ。

回避不可能な距離までくると、勢い良く前にブツを持ち出す。

すると、ブツの内部へと尖端が押し込まれる。

「消火器!?」

女が対応しようとしたが、何もかもが遅い。

刺した隙間から、一気に白い粉が噴出す。

その瞬間に、手の中にある消火器がいう事を聞かなくなる。

片手では押さえきれないほどの力がある。

だが、十分役に立ったので、地面へと投げ捨てた。

周囲は霧以上に白い世界に包まれて、何も見えなくなった。

自分にも不利だが、相手も解らないはずだ。

教室の中にいる人間達が気付かれては厄介だ。

さっさと決着をつけるぞ。

刹那、女の感情のニオイが鼻に届く。
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