妖魔04~聖域~
能力が戻ったらしい。

だが、動作を行う前に空を切り裂く閃光が走る。

腕で防御したが深く斬られ、血が滴り落ちる。

「ち!」

退魔師、奴らは妖魔の気配を感じることが出来るのか。

例え、視界がゼロの状況でも、相手を始末することができる。

腕が立つようならば、尚更のことだった。

だが、こちらも同じ条件である。

相手の感情を嗅ぎ分ける事が出来、場所を読み取る事は可能だ。

更にいえば、女の激昂のニオイは、他人と格段に違う。

妖魔を憎むような怒りを普通の人間は抱かない。

だから、別の人間がいよういまいが、女だと認識が出来る。

右から女のニオイを感じる。

「あっち向いて、ほい!」

俺は奴が攻撃する前に、能力を発動させた。

俺の能力は物質の向きの転換にある。

ただし、範囲が決まっている。

固定してある物を無茶な方向に転換させることは不可能だ。

例えば、関節や体の向きなどを変えられる。

肘の関節なら上下左右で、固定位置まで向きの転換が出来る。

人の体ならば、左右に転換させることは出来るが、無茶な方向の上下は不可能だ。

人だけにあらず、意志のない物の転換も可能だ。

拳銃の弾などの速く突撃するものも出来るが、手首の動作と「あっち向いてほい」の掛け声がなければ、向きは変わらない。

見えない状況だとしても、物体を肉眼で確認した後で座標を感じ取る事が出来れば、能力は使用可能だ。

距離はキロ単位では使用不可能だが、近ければ出来る。

ニオイで座標を感じられる父親の能力と俺の能力は相性が良い。
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