妖魔04~聖域~
人差し指を左に向けて、対象をナイフを持っている腕に指定した。

女はナイフを動かそうとしていたのだろうが、何度も斬られるほどバカじゃない。

先手を打てば、好機を掴む事が出来る。

能力を使用した以上は、腕は体を巻くように左へ。

それに伴って、ナイフの位置は左にある。

距離は離れていない。

自分に起こった異変に気付きながらも、俺をやるつもりか。

だが、隙を作った以上は俺のターンだ。

女の位置がわかるので、腕の位置も記憶している。

手を伸ばし、ナイフを持った腕を掴もうと思ったが咄嗟に逆の腕を掴んだ。

隙を作ったとはいえ、持ち替えることは可能なのだ。

見えない位置だからこそ、判断を誤ると痛い目に合う。

退魔師に普通の選択は通用しない。

ただ、攻撃しにいくのも、封殺された腕を掴むのも、ありきたりだ。

何もない腕を掴む。

賭けといっちゃ賭けだ。

女の性格からすれば、何としても勝ちたいだろう。

だから、空いている腕を使ってカウンターを狙う。

もしくは、女は俺を侮っており、余裕がある。

利き腕とは逆の腕でナイフを振るっていたとするのならどうだ?

そうだとするのなら、今の状況で持ち替えるのは絶好のチャンスだと言えるはずだ。

どちらにしても、ナイフを持ち替えるという選択が生まれるわけだ。

俺はそう読んだ。

掴んだ腕を引き寄せてみるが、ナイフがない。

「ふん!深く読みすぎね!」

笑みを浮かべた女が斜め下からナイフの一閃させる。
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