妖魔０４～聖域～
四年も経てば、別の人間が立っていてもおかしくはない。

俺に対しての記憶もないしな。

「あんた」

「何だ？」

俺は他人として振舞おう。

子鉄ちゃんの幸せを潰すつもりもない。

七三男にはイヴァンの時のような危険性も感じられない。

「アタシ達とやるつもり？」

「かかってくるのなら、やるけどな」

「そう、安心していいわよ。熱いのはこの子だけだからね」

短いやり取りだけを残して、三人でどこかへと歩いていってしまった。

得るものもあれば、失うものもある。

人生は、上手い具合に循環している。

それに、得たものと失ったものを天秤にかけるようなことはしない。

目の前の女性は何よりも大切だし、思い出の中の君も大切だから、軽いとか重いとかで判断してはならない。

「行こうか」

今は、お吟さんがいる。

例え、お吟さんが他の男とやっていようが構わない。

全てにおいて、惹かれているわけだからな。

「王子様」

「どうした？」

ロベリアは辛そうな顔つきだが、どこか痛むのか。

「心の痛みに苦しんでる」

勘違いも甚だしかったな。

ロベリアに余計な痛みを与えてしまった。

心の変化を読み取ってしまうロベリアには驚くばかりだ。

「今の幸せが大きすぎて切なくなっただけさ」

これ以上、何を望めというのか。

俺に出来ることは、望む事よりも失わない事だ。

ささやかな幸せぐらいは守る。
< 195 / 330 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop