妖魔04~聖域~
「お前!千鶴に何してる!」

鋭い風を感じたので、俺は飛びのく。

俺がいた場所には一つの影が座り込んでいるようだ。

それは、乾瑠璃子であった。

手には短刀が握られており、俺を八つ裂きにする準備は万端のようだ。

子鉄はどうしたのだろうか。

「瑠璃ちゃん!私は大丈夫だから、武器は仕舞って!」

「駄目!危険よ!何かを企んでいるかもしれない!」

子鉄が男の下に行ったので、一人にしまいと代わりに寄越したのが瑠璃子なのかもしれない。

「お前さあ、よくそれで生きてこられたな」

「黙りなさい!千鶴に近づいた理由を言え!」

「目的といわれてもなあ」

千鶴と出会う予定はなかったので、目的はない。

家を見たかったという目的ならあるのだが、信じないだろうな。

しかし、不思議な事がある。

写真があるのなら、他の物も残っているはずなのにな。

俺の部屋には入ろうとしなかったのか?

部屋に入ってはならないという暗示でもかかっていたのか?

もしくは、家の中を詳しく調べようとしなかったのか。

だから、俺の事が気にならなかった。

じゃあ、子鉄が家にきた原因はどうなったのか。

俺が高校一年の時に子鉄と出会い、家に来た事になっている。

原因となる記憶がないのに、家にいて千鶴と仲良くすることはおかしくないか?

本来ならば、自分の家にいるはずなんだがな。

つじつまを合わせるために、世界が別の理由に書き換えてしまったのか。

よくは解らないが、流れは変わらないらしい。
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