妖魔04~聖域~
「好都合だな」

「独り言をベラベラ言ってるんじゃないわよ!」

俺にも旅の疲れがある。

余計な戦闘は避けたいところだ。

若さも経験も瑠璃子のほうが上だろう。

武器も変わってるところを見ると、さらに腕を上げているのかもしれない。

本来の武器から離れて別の得物を使うなんて、中々出来ない事だと思うがな。

「なら、厄介だな」

しかし、千鶴が瑠璃子の体に抱きついて拘束する。

「早く、逃げてください!」

「ちょ、千鶴、お前、何考えて」

今なら逃げる時間くらいは出来るだろう。

千鶴が体を張った事だ。

ちゃんと利用させてもらう。

俺はコートを翻しながら、その場から退却する。

「卑怯者ー!」

瑠璃子の叫び声が聞こえてくるが、冤罪だ。

「卑怯なのは武器を持ったお前だろうに」

瑠璃子と遭遇すれば、確実に戦闘になるということが解った。

大きな収穫かもしれないな。

逃げる事数分、後ろからの追手は来てないようだ。

走る足を緩めて歩き出す。

自然と学校付近に近づいていたようだ。

息は切れてないが、精神的に疲れる。

瑠璃子には敵視されるし、千鶴からも迫られるし。

瑠璃子の場合、一度は敗北した相手じゃないと静かにならない。

子鉄という盾を失くせば、退魔師からの保護はなくなる。

例え、退魔師が妖魔と敵じゃないとはいえ、壁はあるものだ。

千鶴は千鶴で、余計な写真を見つけたおかげで、今後の行動が非常にやりにくくなる。

素直に諦めるとは思えない。
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