妖魔04~聖域~
「軽率な行動だったか」

地元となれば、家がどうなってるかぐらいは知りたい。

千鶴に会わないようにするしかないな。

しかし、探りを入れて危険な事に身を投じなければいいが。

「はあ、お吟さんを待たせるわけにはいかないな」

ビルまでたどり着くと、行き倒れを発見した。

暗さでよくは見えないが、体格からすれば女になるのだろう。

放っておくことも出来るが後味の悪い事になる。

近づいていくと、十代くらいの長髪で裾の短い着物を着ているくらいは解った。

心音を確認するために胸に耳をつけると、しっかりと時を刻んでいる。

「死んでないようだな」

龍姫の住処で治療か。

それとも、病院で治療か。

少しだけ魔力を感じるところ妖魔になる。

だとすれば、病院に連れて行くと色々と面倒になりかねない。

「今日はあまり良い事が起きないな」

女の治療を試みるべく、龍姫の住処まで負ぶっていく。

「刃の阿呆。それはお前のじゃない」

「のん気にいい夢見てるね」

龍姫の住処に帰ると、皆が様々な色の表情を見せていた。

怪訝そうに見ている紅玉の視線が一番痛い。

「ちょっと行き倒れになっててな」

「あなた様は龍姫様の住処がどういう理由で作られたのか解っているのですか?」

「でも、放っておくことは出来ないだろ」

紅玉から言えば、軽率な行動といえる。

龍姫の命と繋がっている神殿であり、隠れ家だ。
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