妖魔04~聖域~
「お吟さん」

話し相手にでもなろうとお吟さんの隣に座る。

「どうしたアル?アチシと夢の世界に旅たちたいアルか?」

見た感じには変わった様子はないのだが、静かだと逆に変に感じてしまう。

「静かだと思ってさ。さっきも龍姫にイタズラしなかったし、体調が悪いんなら言ってくれよ」

お吟さんがため息をつくと、優しい微笑みがそこにある。

「丞はバカアル。余計なことを心配する癖は直したほうがいいアルよ」

「俺の一番嫌な事はお吟さんが傷つく事だよ」

「臆病になるんじゃない。私は自分の身を守れる」

威厳のある瞳が伝えている事は、一つの壁だった。

長い旅をしてきたが、お吟さんの心に触れてないような気がする。

「俺は、共にいられるようにお吟さんを守りたいんだ」

「そんな考えでは早死にする」

「それでも、考えは変わらない」

「学習しない奴は生き抜くことが出来ない」

何故、他人を拒むのかがよくわからない。

例え、お吟さんに拒まれたとしても、俺はオープンであるべきだ。

俺はお吟さんの両肩を掴み、机に向いていた体をこちらに向ける。

「吟が俺を見捨てても、俺はお前を見捨てない」

だが、お吟さんの厳しい表情は変わらない。

「結局、何も変わっていない」

「どういうことだ?」

「答えが欲しいか?」

冷たい目線は俺の心を刺している。

「お前は守る事に重心を置きすぎている。それでは相手の奪うという気持ちには勝てない」

俺に足りないのは攻撃の姿勢だというのか。

「相手は肉食、お前は草食。この差は絶大だ。相手が動いてからでは遅すぎる」

確かに、全てが後手に回って何もかも失った。

「丞に足りないのは闘志だ。実力があっても圧倒的に勝つという気持ちが足りない」
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