妖魔04~聖域~
「闘志、か」

しかし、圧倒的な火力を持った敵だと、奪う気持ちがあったとしても勝てるかどうかは解らない。

「後は頭の回転の速さだ」

「結局、そこか」

「丞ちゃん、吟のいう事は確かじゃ」

後ろには涙を流した龍姫が立っている。

お箸を返してもらえなかったんだろう。

「丞ちゃん、そなたは何かを勝ち取ろうと思った事はあるか?」

「ある」

「その気持ちはまだ胸の中にあるか?」

思い返してみると、途中で諦める事が多くなっていたかもしれない。

「ない、のか?」

研究所の時も、誰かを守るという事でいっぱいで、相手に勝つという気持ちは二の次だったはずだ。

「丞、お前は悲惨な体験をしすぎた。それがブレーキとなっている」

失う事が怖いのか?

「仲間がいるところで守る意思を出すのはとても重要だ。だけど、それでは本当の勝利はつかめない。誰かを失うことになる」

前へ進んで勝たなければ、死しか残っていない。

何も見ていなければ、勝つという気持ちはなくてもよかったかもしれない。

暮らしていくだけで支障はない。

だが、激動の時代を見てきた。

一歩も下がる事が出来ず、前へ出る事も出来ず、守ってやり過ごせば何とかなると思っていた。

だから、村の人間達は死んだ。

力がないと思い込み、逃げ回った結果は無様の一言で片付く。

例え、力があっても、意志がなければ意味はない。

「お前は何を求める?」

お吟さんの瞳は意思の炎が宿っている。

闘いを避けては通れぬ世界。
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