妖魔04~聖域~
暗闇の中。

電灯の下にあるベンチに俺は座っていた。

深層世界に来ているらしい。

「痛みはないとはいえ、色々と疲れたぜ」

「あなたは馬鹿でしょう」

歩いてきたのは母さんだった。

「また会えるとは思っても見なかったぜ」

しかし、母さんの姿が揺らいで見える。

長くは持たないという事なのか。

「息子にバカはないだろ」

今回の事は母さんもやりすぎだと思っているみたいだ。

「身内同士で殺し合いなど、誰も信じないでしょう」

「俺は、吟を離したくはないんだ」

「あなたは母さんの欲求を解消させただけでしょう」

「それでもいい。何かのきっかけになったんならな」

最初の第一歩であるならば、良かったという事なのだろうか。

傷ついた者は幾つかいたのだがな。

「これから先も、そうやって過ごしていくのでしょうか?」

「出来るなら、違う形で欲求の解消の仕方を知ってもらいたいけどな。でも、他に選択肢がないのなら、頑張っていくつもりさ」

「母さんのどこが好きなのでしょう?」

「淫靡なところとか、明るいところとか、ロベリアを抱き枕にして寝てるところとか、全てだ」

「バカなところは蛍に似たでしょう」

「案外、母さんかもしれな、ロマーニオ!」

頭をはたかれて、俺は地面にうつ伏せに倒れた。

凄まじい衝撃を受けた。

そして、そのまま深層世界の中で気を失った。

それは目覚めの合図だったのだろう。
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