妖魔04~聖域~
「いてえ、くそ、やりやがったな。クソジジイが!」

「だーれが、ジジイか!」

一本背負いで床にたたきつけられた。

「いってええ!」

一瞬でも瀕死に追い込んだ相手とは思えない。

ジジイに勝てたのはまぐれだったのかもしれないな。

「吟を頼んだぞ」

「おい!ジイさん!」

俺の手を離したジジイは背中を向けて、龍姫の部屋を出て行った。

経営している旅館に帰ったのだろう。

吟は後姿を見ているだけで、追いかけようとはしなかった。

「挨拶、しなくて良かったのか?」

「丞が寝てる時にたっぷりしたアルよ」

吟のたっぷりという言葉はいやらしさを感じてしまう。

しかし、今の吟の心中は複雑だろう。

表面に出ているのは笑顔だがな。

「少しいざこざがあったが、今後の事を話し合うかのう」

ジジイとの戦闘で一時中断していたが、本当は対策を練るために神殿にいる。

龍姫の声によって、全員が大きな机の周りに集まって座っている。

ホワイトボードに書き出された組織名。

改革派、テンプルナイツ、イヴァンと三つが上げられている。

「どの組織も圧倒的な火力を持っていて、けが人を出す事は間違いないということだ」

「コラ、保守派が入ってないぞ」

燕がいらぬ野次を飛ばしてくる。

「お前らは里の守りを強固にするための存在だろ。あまり外に関わらないじゃないか」

「何を言う。私はばっちりやる気満々だぞ」

「お前は少しだけ美咲の爪の垢を飲め」

「私はわかめ酒のほうがいい」

「よし、少し眠ってもらおう」

背後に立っていた紅玉の手刀によって、床へと横たわる。
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