妖魔04~聖域~
燕がいた位置には人形が立てかけられており、いつの間にか姿を消していた。

「いない」

「先ほど帰ったみたいじゃ」

「はあ」

追いかけるのはやめよう。

飯の分の貸しは利子をつけて返して貰ったし、十分に役に立ってくれた。

それに、もう一人手がかりがある。

もし、帰郷していなければ、まだこの町にいるはずだ。

「ハンスはマリアがいれば抑えられるんだが、もっと強力な存在が上にいる。テンプルナイツ総長のジャックっていう奴だ」

ジャックもチューナーの一人だろう。

妖魔を抹殺しようとしているのにも関わらず、妖魔を利用してる性悪だ。

「言葉で自分と敵に条件付けさせる能力があるらしい。ただ、あまりに無茶な条件は出せないだろう」

メリットが素晴らしい能力にはデメリットは着いてくるはずだ。

もし、デメリットがないとすれば、どうする事も出来なくなる。

そこは賭けだ。

そして、ハンスとジャックのどちらを先に抑えるかによって、状況が変わってくる。

周囲を片付けてから、ボスを抑えるか。

その逆か。

どっちにしろ、攻めてきてからじゃなけりゃ話にならないし、ボスに辿り着くのも難しい。

「少し待つアル」

今まで黙っていた吟が口を開いた。

「どうした?」

「日本に攻め込んできたなら、人間を滅ぼそうとする改革派との戦争が始まるアルよ」

すっかり、俺達だけが動く事に視点が行っていた。

「犠牲者が溢れる。妖魔もテンプルナイツも一般人も」

「いいじゃねえか、両方倒れてくれるなら、多少の犠牲で済むんだろ?オラ達はは外国で仕事を見つければいい」

「アホか!そんな重火器対能力で争えば日本が潰れるっつうの!」

そうなってしまえば、誰も住めない土地になってしまう。

「少しお待ちください」
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