妖魔04~聖域~
「金はこいつがちゃんと払うぞ」

燕が俺のほうを指差している。

「お金の問題じゃないです。警察行きましょ」

店員が燕の腕を掴もうとしたが、俺が声を出して制す。

「すいません。こいつが悪さしたみたいで」

立ち上がりたくても、立てないので座った状態で頭を下げる。

「本当にすいません。魔が差したで許される問題じゃないと思うんですけど、許してやってくれませんか?後で言い聞かせておきますんで」

何度も謝り続ける。

最終的には、からあ〇くんの金額を払って、店員に頭を下げ続けて許しを得た。

「お前、世の中の仕組みぐらいはわかるだろう」

さすがに、放置しておける問題ではない。

「私は世界のからあげを征する女。目の前にからあげがあれば手を出すんだ」

「無銭飲食は犯罪なんだよ。まずは金を払え。お前が金を払わないと、からあ〇くんの金額以上に他の物を売って売り上げを稼がなくちゃならないんだ。それに、本当なら走らなくてもいい距離を走って、お前に時間を割いてくれたんだぞ。解ってるのか?」

「次からは気をつけよう」

口では言っているが、からあげを頬張ってるところ聞いていない。

親代わりとして顔に一発ビンタをかまして目を冷ましてやりたいところだが、体が動かない。

「お前とは縁があるな。これは迷惑をかけた礼だ。ありがたく頂くがいい」

俺の体と吟の体に触ると、抜群の癒しの効果がある能力を行使した。

俺の体はともかく、吟の体に異変があることによく気がついたものだ。

あっという間に体の痛みは引いていく。

死人以外なら、立ち直らせることが出来そうな恐ろしいまでの力だといえる。

燕が力を使って悪用なんて事はしないとは思う。

保守派だし、からあげをただで食おうとする小悪党だしな。

でも、二度も助けてもらったのに、小悪党呼ばわりは酷いか。

体を触って、どこも異変がないか確かめる。

俺の体は無事、完治したようだ。
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