妖魔04~聖域~
何時間経っただろう。

気合の入った吟の凄まじさといったら、世界を覆してしまいそうだった。

おかげで、ミイラになる寸前だ。

コーラを飲むと、水を得た魚のように回復する。

「ふう」

吟は汗を落とすために、シャワーを浴びている。

俺はベッドの端に座っている。

考えることは沢山あったんだろうけど、一時中断している。

今考えても吟の事に切り替わってしまう。

「吟」

戦を楽しむ吟。

それは輝いて見えたが、危うくも見えた。

生と死の狭間に立っているんだ。

出来るならば生に留まって、死に旅立たないで欲しい。

ホテルを出れば、また戦の世界が始まる。

逃げ道はある。

何もかも捨てて、海外にでも逃亡すればそれで何もかも終わる。

「それは出来ない」

今まで散々逃げてきたというのに、また逃げる事は出来ない。

吟はどうだろう?

俺の身勝手で、付き合わせ続けていいものか。

「私は戦場が好きなんだ」

風呂から出た吟の髪には潤いがあり、体にはタオルを巻いている。

「吟」

隣に座ると、落ち着きのある香りがこちらに漂ってくる。

瞳には潤いはないが、真剣そのもの。

「私はお前を選んだ。お前のやることに異存はない。でも、私を置いていくとなったら話は別さ」

そう言いながら、俺のコーラを奪って勢いよく飲む。

最後にゲップをするところ品性を問いたくなってくるけど、吟らしい。
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