妖魔04~聖域~
何も出来なかった日々の過去。

それを拭い去る日々の現在。

どうなるかわからない日々の未来。

それぞれの道を歩む。

その時、その時にベストを尽くす。

力不足だったけどベストだったと思う。

でも、力不足で出来ないでは済まされない。

現実にいるんだ。

吟の肩を掴み、傍に引き寄せる。

この感触も現実。

今の状況はとても非現実だけど、現実。

吟を失くすことも現実で、何もかもが事実なんだ。

もし、俺の敵がいるのなら、吟を守って世界を続ける。

それが、吟を失くさないための努力だ。

逃げてもどうせ、追いつかれることになるかもしれない。

ホテルから出て歩くと、暗闇に包まれていた。

空に星はないが、雲だけは漂っている。

綺麗とは言いがたいが、平凡がある。

「平凡、か」

「凡人にアチシの相手は務まらないアルよ」

「解ってるよ」

究極の凡人でいたいんだけどな。

そういうわけにもいかない。

商店街付近まで辿り着くと、世話になってる分、何かモノを差し上げたいと思った。

吟だったら、少しくらいは貢ぎたくもなる。
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