妖魔04~聖域~
時計屋を見る。

五年前、俺は千鶴に懐中時計を上げた記憶がある。

今もあるのかはわからないけど、使っててくれるとありがたい。

誰から貰ったかも解らない懐中時計を持っているのか解らないと、気味悪がって仕舞ってしまえば、お仕舞いだったりするんだけどな。

無制限という言葉がお似合いのお吟さんには時計は必要ないだろう。

格闘技に役立つメリケンサック?

お吟さんは手刀を使う事が多いんだよな。

主婦に一着、割烹着?

家事をしているところを見たことない。

一人の夜も安心、バイ〇。

一番喜びそうだが、何か違うのでやめておこう。

過去にも悩んだ記憶がある。

「吟に似合うものか」

ネックレスは戦う時の邪魔になって仕方ない。

妥当なところで指輪か。

「まだ性欲を解消できてないアルか?」

独り言を口外していたみたいだ。

「今日は十分だよ。と、ちょっと待っててくれないか?」

「一人でこっそりするアルか?こりないアルな」

「はは、やる時は吟とするさ」

俺は一人で店内に入る。

金はまだある。

妥当な物で行くとしよう。

俺は貴金属の売っている場所に足を運んでいく。

指のサイズを聞くのを忘れていた。

小さすぎなければ、何とかなるだろう。

シンプルなのを買い持って、俺は店を出て行く。

すると、吟に声をかけている若い男がいた。

今時の格好に金髪という身なりで、ナンパか勧誘でもしているのだろう。

「吟」

「おー、こいつがいいところに連れて行ってくれるアル」

男は露骨に嫌そうな顔をして、どこかへと行ってしまった。

「こんなところにもナンパするような奴がいるなんてな」
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