妖魔04~聖域~
「別にいいアルよ」

「ええ!?」

吟が先に断ると思っていたが、簡単に承諾してしまった。

祖父さんもいるというのに、居辛くないのか。

「吟、そんなに肉が食べたかったのか?」

「丞が激しい運動に付き合わせるから、腹が減ったアル」

一番乱れていたのは吟だったような気がするんだがな。

ロベリア達には悪いけど、今日一日は吟と一緒にいよう。

俺が傍にいたいんだ。

つき合わせて駄目だって言うのは我侭すぎる。

事前までは憂鬱だったが、今は気にしていないようだ。

吟が気にしていないのなら、俺も特に気にしない。

「俺もいいのか?」

「吟さんや靜丞さんと仲の良い人ですから、悪い人じゃないと思います」

「ありがとう」

他人行儀だが、優しさだけは変わらない。

家の中に入ると、ゴミの山は存在してなかった。

きっと、今日は掃除をしたんだろう。

リビングへ歩いていくにつれて、肉のニオイが強くなっていく。

リビングには笹原家の面子とジジイと見知らぬ男が一人。

男は、静かな調子で野菜ばかり食している。

欠食童子のように頬コケで肉を食えと言いたくなる。
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