妖魔04~聖域~
保守派の上層部だけあって、改革派に対して手段は備えているだろう。

しかし、保守派だからといって、味方とは限らない。

改革派を見張っているだけで、人間界に干渉しない存在だ。

美咲は人間よりの考えが強いけどな。

「どうかしたのかな?」

緩やかではあるが、緊張してしまう。

秘めた威圧感を肌が感じ取っている。

「何でもありません。初めまして、ザックと言います」

俺と道元の手が組み合って、握手の形を取る。

「報告にあった名前と少し違うようだね」

「俺の名前はザックですよ」

葉桜との関連性を隠すために、通称で通す事にした。

バレているかもしれないけどな。

「そうか、ザックというのならザックなんだろう」

「ええ」

「道元君!道元君!肉も食べなきゃ駄目だよー!」

横から割り込んできた久遠によって、道元は連れ去られていった。

吟よりも夫の道元を選んだ。

道元がいなくなった途端、気持ちが軽くなった気がする。

道元が傍にいると、気持ちが重くなる。

上層部だけあって、色々な修羅場を潜ってきた妖魔だ。

久遠は傍にいてもあまり気にしていない。

二つ気になったことがある。

一つ目、上層部の妖魔が、人間界に何をしに来たのか。

人間界に出てくるほどの用事があったのか。

それとも、家族に会うためだけに出てきたのか。

二つ目、燕はどこに行ったのかだ。

道元に報告がいくとはいえ、燕に聞いたほうが楽だ。
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