妖魔04~聖域~
「この家に夢島燕っていうのがいるだろ?今日はいないのか?」

「燕さんに、何か用?」

燕さん?

美咲の方がしっかりしているように思えるのだが、燕のほうが先輩なのか。

「ちょっとした約束をしたんだけどな」

「燕さん、ザックが来るちょっと前に出て行ったよ」

「嘘だろ?」

ラーメンをおごって話を聞きだそうとしたんだけどな。

「多分、刃さんのところだと思うけど」

「刃さん?」

燕と仲のいい奴だろうか。

「行動力のある人かな。燕さんと仲がいいんだ」

刃という者は気苦労が耐えないだろう。

美咲に聞いてしまうか?

道元や燕よりも、的確な答えが返ってきそうだ。

「美咲、ちょっと」

「あんた、いつまで美咲にちょっかいかけるつもり?」

俺が聞きに入ろうとすると、冬狐が横から口を挟む。

目は鋭く、俺を疑ってかかっているようだ。

「俺は聞きたいことがあったから、美咲を連れ出しただけだ」

「女がいる男が別の女にベタベタするのは甲斐性なしの証拠よ」

そういえば、四年前も美咲の事で冬狐に色々言われたな。

美咲の事が大切で、俺が余計な事をしたから怒ったんだ。

「お姉ちゃん、ザックは悪くないよ」

俺と冬狐の間に入って、冬狐を宥める。

「悪いのは俺だ」

俺は素直に頭を下げて、冬狐の怒りを静めることに徹する。
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