妖魔04~聖域~
少し待てよ。

もし、燕の報告が俺の情報と一致すれば、俺の正体はバレている。

日本の妖魔は組織の上層部によって情報を管理されているのだとすれば、道元が情報を問い合わせれば解ってしまう。

燕は、吟達が言っていた俺の名前を伝えただろう。

隠し事は意味を成さない。

道元よりも情報量の少ない冬狐も、妖魔の情報を管理している場所にアクセスしたのか。

ザックという男の妖魔の情報は日本にはなかったんだろう。

葉桜丞で探さなければ、見つからない。

「そこにいる女性が言った通り、俺は妖魔だ」

苦し紛れの嘘を言うよりも、本当のことを言っておく。

これ以上怪しまれたら、今後近づく事すら叶わない。

「ザック、本当は燕さんじゃなくて、お父さんが来てるから近づいたの?」

道元に対して何かをすれば、得られるものがあるということか。

でも、道元に用はない。

力を借りれば楽にはなるが、傍にいると息が詰まる。

どうせ、傘下にも入らなければならないだろう。

どこの組織にも所属するつもりもない。

動きたい時に動けない場合があるからな。

「俺は燕と約束しているって言っただろ。美咲のお父さんがいるなんて情報は知らない」

敵扱いをされるのは辛い。

「でも、葉桜吟がいたわよね?彼女なら道元がどこにいるかぐらいの情報は簡単に得られるんじゃないの?」

冬狐は美咲以上に俺を信じようとはしないみたいだ。

冬狐からの扱いは変わってないので、ダメージは大きくはない。

しかし、吟が道元の居場所を知っているとはどういうことか。
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