妖魔04~聖域~
「お姉ちゃん、これ以上問い詰めるのは駄目」

美咲が何かを悟ったのかは解らないが、信じてくれたのか。

「この人が何者であったとしても、疑いたくない」

冬狐はため息をついて、頭をかいた。

妹の芯のある一言に、負けたのだろう。

「別にこいつが何者であるかなんてどうでも良かったわね。でも、一つ聞かせてもらいたいことがあるわ」

「何だ?」

「あんた、何したの?」

「何って?」

「質問の意図すら汲み取れないのは、頭の病院に行った方がいいわよ」

「そうかもな」

すでに頭を弄られているので、普通の病院にいっても治りそうもなさそうだけどな。

てっきり、無理矢理調べられると思いきや、すぐに諦めてくれたようだ。

余計な行動を起こすと美咲が動くので、やめたのかもしれない。

冬狐は家の中へと入っていき、その場に残ったのは俺と美咲だけになった。

「ザック、お姉ちゃんが色々と言ってごめんね」

「君が謝る事じゃない。礼を言いたいくらいだ」

長く居ると、懐かしさのあまり要らぬ事を言ってしまいそうだ。

高校生の時ならば、焼肉を食べ続けて和気藹々とすればいいだろう。

でも、和気藹々とするのは、全てが終わってからなんだ。

「じゃ、戻ろう?」

「すまない。今日はもう帰らなくちゃならない」

吟も腹が膨れる程は食べただろうし、ロベリア達の様子が気になった。

「ザック、全然、食べてないよね?」

「気になる事があってね」

俺が吟を呼び戻そうとしたら、吟が家の中から出てくる。

「帰るアル」

出てくる前と一緒の様子ではあるが、気だるそうだ。

道元がいたことによるものか?
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