妖魔04~聖域~
「いいのか?」

「食べるなら、男で十分アル」

吟がきっかけを作ってくれたおかげで、離れられる口実は出来た。

「話になった」

「ううん、いいよ。今度はゆっくりしていってね」

「そう出来ればいいな」

もう一度、美咲と会うことはあるかはわからない。

再び敵になるのか、今の状態で維持しているのか。

俺が死んで会う事すらままならないのか。

もし、会うことが出来るのならば笑顔のままでいて欲しい。

俺達は美咲の家から遠ざかっていく。

家の下まで来ると、夜風がとても心地いい。

「さてと、今日は帰るか」

「ふぁあ、眠くなったアル」

憂鬱な顔をしていたのは、眠かっただけか。

食ったら寝るなんて、贅沢な生活だな。

千鳥足で歩いているところ、横になってしまいそうだ。

「よっと」

俺は眠りそうな吟を負ぶって、歩き出す。

吟に抵抗する意志はなく、背中に体重をすべて預けている。

寝息が聞こえているところ、眠っているのだろう。

寝顔を見せられるほど、平和な一時がここにはある。

「妖魔も、人間も、何事もない世界で暮らすのがいいんだけどな」

何でこんなに凶悪で、恐ろしい世界なんだろう。

人間だけの世界でも争いは絶えないというのに、違う種族がいるから激化することとなった。

「何でお互いを認め合わない?何でお互いが手を取り合って、いい方向に仕向けない?」

譲り合う気持ちを持てば、出来るはずなんだ。
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