妖魔04~聖域~
「のわ!」

いつの間にか起きていた吟が、俺の耳元で息を吹きかけながら重要な事を仰ったような気がする。

「行ったことあるのか?」

「数年、男達の相手をしていたアル」

吟は色々なところへ行っていると感心したのはいいが、いつの時代もビッチだと思ってしまった。

「クルトは早く職を持って、自立したいんだよな。何で屈強な奴らのところに出向くんだ?」

「騙されたアルな」

「誰に?」

日本に来てから、他の誰かと接触したなどということはなさそうだ。

龍姫だって、クルトを騙すような真似はしないだろう。

「丞は観察能力がないアルな」

「す、すいません」

「以前のクルトの状況をよく考えるアル」

そういえば、イヴァンの使いっぱしりで、暑苦しい妖魔と絡んでいたな。

誰かが天国の島の話をしていて、小耳に挟んだクルトが行く事にしたのか。

人間達が集まる場所よりも、自分には合っていると踏んだのか。

どっちかっていうと、妖魔の里を選んだ方が良かったと思う。

天国っていう名前の響きに負けてしまったのか。

「現実的じゃねえな。どんな場所なんだよ?」

「その名の通りアル。強い者にとっては天国アルな」

「逆に言えば、弱い者にとっては地獄ってことかよ?」

弱肉強食という言葉がついて出てくるなんて、中々ない。

正直、夢の島だな。

「前は大金持ちが娯楽のために管理していた島アル」

「娯楽?」

「島の中の状況を見て楽しむアルよ」

「何だそりゃ、スナッフビデオなんて悪趣味な奴だな」

強き者が何でもしていい島というのなら、法律なんて存在しなかっただろうな。
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