妖魔04~聖域~
楽観視とまではいかないが、ポジティブシンキングを取っていかないと何事も乗り越えていけない。

俺、良い事言った。

心の声は誰にも聞こえることなく、手を繋いだ仲の良い二人は遠のいていた。

「レズってハニー!俺もその輪に入れてクレヨン!」

二人の背を追いかけるように、俺達三匹は電車に乗り込んで目的地へと向う。

電車の中では駅弁を食べる吟と、窓の外を静かに眺めるロベリアがいる。

じっくり見ても、ぱっと見ても、ロベリアはとてもキュートだ。

いつかは誰かと添い遂げるのか。

その前に吟が手放すかどうか。

でも、記憶が戻った時、どうなるのだろうか。

俺達も憎しみの対象となって、切り裂かれてしまうのだろうか。

「ロベリア」

名を呼ぶと、返事の代わりにこちらに向って微笑み返す。

「今、お前は幸せか?」

「王子様と王女様の間は小春日和です」

春ではないところが気になるが、気候としては過ごしやすいわけだ。

外の風景は建物の代わりに一軒家や畑が多くなって、都会から田舎へと変わっていく。

遠方に海が見えて、光の反射によってキラめいている。

本当に天国の島へと続く港が存在するというのか。

吟は一度行ったことがあるから、間違いはないんだろうけどな。

どんな場所か。

猛者達が住むっていうんだから、住み難い世界なんだろうな。

辿り着いた瞬間に、襲われる可能性もありそうだ。

だが、クルトを見つけ出すまでは簡単に負けない。
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