妖魔04~聖域~
海の向こう側には別の世界が存在している。

ラインが住む世界、テンプルナイツがいる世界。

離れてはいるが繋がっている。

繋がっているから、恐れがある。

避けられない恐れ。

日本だけを隔離する事は出来ず、受け入れようとしている。

少し離れた場所には漁船やヨットが並ぶ。

しかし、船を運転する者は誰もいない。

「なあ、ここの人が島まで連れて行ってくれるのか?」

浜にある海の家『ざぶーん』の傍の一軒家。

『ざぶーん』は今閉まっているが、夏は経営しているのだろう。

「アチシの義姉が島の位置を知っているアル」

吟の義姉といえば、ジジイの姉に当たるのか。

ジジイに姉がいたとは予想外だった。

「島の行為に加担してるのか?」

「島を見つけたのは偶然アルよ」

「じゃあ、本来は別の船で島に運ばれるわけか?」

「うむ、そっちからも簡単にいけるようになっているアル」

義姉に会うために、こっちを選んだわけか。

でも、クルトは確実に通常ルートを選んでいるはずだ。

裏ルートだと、止める事が出来ないんじゃないのか。

楽しむためにわざとこちらを選んでるのか。

「おーい、琴ー。船出せアルー」

止めようとしたが、吟が声を上げている。

しかし、玄関の扉が開く事がない。

「いないようだし、通常ルートで行こうぜ」

無駄な事は避けておきたい。

今なら、まだ間に合うかもしれない。

だが、俺の意見など存在しないように、扉を横に引いた。

鍵は閉まっていなかったようだ。
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