妖魔04~聖域~
「おーい、琴ー。船出せアルー」

同じ台詞を言いながらも、中に入っていく。

「にゃふう、久々のくせして何やってるにゃあ」

奥から出てきたのは、額に三日月が刻まれた喋る黒猫だった。

セラ〇ンを思い出してしまいそうだ。

でも、気だるそうな瞳が三日月よりも特徴的だった。

「琴はアチシのために船を出せばいいアル」

「傲慢だにゃあ。でも、吟ちゃんだからいいにゃあ」

何もかもどうでもいいような感じで、進めていっている。

「サインはVアル」

ピースをつくっているが、俺は中指を立てるか、親指を下に向けたい。

家の中に入ることは決定づけられてしまった。

狐の次は猫か。

姉弟という事は、ジジイも猫だったりするのか。

似合わないな。

琴が話せるのは言語を発音する技術を習得したわけか。

吟の義姉だから、付き合いは古いんだろうな。

「にゃふ、この子は吟ちゃんの家系かにゃあ?」

前を歩きながらも、俺の話題を吟と二人でしている。

「そうアル。さっきから琴に色目を使ってるアルが、アチシの下僕一号アル」

「じゃあ、琴とも血が繋がってるにゃあ。君は見所あるにゃあ」

琴の見る目つきが、獣を狩ろうとするソレであった。

「琴ー、前の男はどうしたアル?」

「にゃふう、不慮の事故でお亡くなりにゃ」

「不慮だというのなら、琴に出会ったことが始まりアルな」

「にゃふにゃふ、吟ちゃんは口が悪いにゃあ。でも、吟ちゃんだからいいにゃあ」

何で許してしまうんだ。

秘密かなんか握られているのか。
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