妖魔04~聖域~
今度は石つぶてが、空の彼方から落ちてくる。

俺の上に来たのでロベリアを抱いてそこから飛びのく。

石つぶてはコンクリートに埋まってしまった。

「あぶねえ」

ロベリアを地面に立たせて、額に浮かぶ冷や汗を拭い取る。

「にゃふう、ごめんにゃあ。悪気はないにゃあ」

「琴が不幸と思わなければ、いいだけアル」

負の感情に作用する能力か。

出来るだけ機嫌をとりながら進めば何事もなく、島に辿り着けるんではないか。

「さっさと出して、島に行くアル」

「にゃふう、あれから動かしてないから動くかどうかわからないにゃあ」

「心配無用アル。動かなかった時は、そこらへんの船を拝借するアル」

「にゃふう、疑われるのは琴にゃあ。意地でも動かすにゃ!」

猫を疑う土地ってどんなんだ。

もしかして、琴の正体がバレているのか?

それとも、ジジイの旅館のように、周囲の住人は妖魔っていうオチなのか?

後者が有力かもしれない。

通常ルートで送るのも妖魔だとするのなら、妖魔が豊富にいるに違いない。

そうだとすれば、空気から伝わってくるのも解る。

今はどうでもいい話だった。

二足歩行になりながらも、島に向うために熱心に船の運転をする猫。

人間になればいいのにと思っていたのだが、運転席は猫の高さに合わせられている。

ティアの豚姿の時も、人間と同じように二足歩行をしていた。

妖魔の姿の二足歩行は当たり前なのだろうか。

そもそも、狐の姿で喋るだとか、変な化けものがいる時点でギャグだからな。

おっと、考えに浸っていてはいけない。
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