妖魔０４～聖域～

「琴、島は広いのか？」

差し障りのない質問で、何とか到着するまでごまかそう。

「にゃふう、全て回るのに一週間はかかるにゃ」

猫の足で一週間だから、広いのか狭いのかよくわからない。

人間の足に換算できればいいが、頭は良くない。

「あの時は大変だったにゃあ。歩いている最中、食べられそうになったにゃ。動物虐待を平気で行うなんて信じられないにゃあ」

このパターンはまずくないか？

「にゃふう、思い出すだけで生きてるのが嫌になるにゃあ」

早くフォローしないと、船が大変な目にあいそうだ。

「何言ってるんだ。俺は琴と出会えたことで超ハッピーだぞ」

究極の作り笑いを編み出して、不幸の気分をなくしてしまうしかない。

「吟のダーリンはいい奴にゃ。名前を知りたいにゃあ」

「葉桜丞だ」

「にゃふう、丞は吟ちゃんから琴に乗り換えるつもりはないかにゃあ？」

猫の姿で言われても、興奮もなにもあったものじゃないんだがな。

「俺は吟が好きなんだ。これは変わらない」

吟の肩を強く寄せて近づける。

「吟ちゃんは人気だにゃあ。でも、吟ちゃんだからいいにゃあ」

琴も吟のことが好きらしい。

だから、自分に乗り換えないなんて不幸だとは言わないようだ。

吟の人気の秘密はどこにあるのか。

色気を全体に押し出すところとか、明るいところとか、目の前の不幸な黒猫でも見捨てないところとかか。

「島から出るのに、何日くらいかかりそうなんだ？」

「にゃふ、あの時は吟ちゃんが早く出てくれてたら、一週間程度で出られたにゃ」

それでも一週間はかかるのか。