妖魔04~聖域~
琴の姿も見えないところ、自分の不幸だけを押し付けたのか。

琴にはふざけるなと言いたい。

誰のせいで危ない状況に追い込まれてると思ってるんだ。

だが、吟も黒鉄も凄まじい泳ぎで安全に島へ辿り着けそうだな。

「ロベリア、このままじゃ巻き込まれる。中心に行く前に飛び降りるぞ」

死ぬか死なないか、賭けである。

分の悪い賭けだ。

俺は飛び降りる前に少し考える。

通常モードよりも、変身したほうがいいかもしれない。

ならば、まだ分はいい方向に向くかもしれない。

「変身して助かる可能性を高める、いいか?」

「王子様、全てを飲み込む意志は全てを超越する」

ロベリアの差し出された手を強く握り締めて、近くに寄せる。

俺は鎧をまとって、船から荒波の中へと飛び降りた。

だが、自然の驚異は恐ろしいまでに自由がない。

渦の外に出たとしても、中へと巻き込まれていっている。

身体的能力がアップしても、無意味に近い。

ロベリアの体を右腕で離さず、左腕を振って外へ外へと逃げ惑う。

だが、渦の魔物は自分の奥底へと無理矢理誘う。

抵抗するなと言わんばかりの力だ。

「ごぶごぼ」

腕の振りが追いついていない。

駄目だったのか。

俺一人だったらいい。

だけど、ロベリアだけは助けたい。

『王子様、空の世界に羽ばたく心』

ロベリアの発言は決して、無意味なもので終わるはずがない。
< 295 / 330 >

この作品をシェア

pagetop