妖魔04~聖域~
『モード:真槍』

俺の能力が光だとするのであれば、ロベリアの能力は風だ。

風の力によって一人の男を助けたということを、ラインの話でも聞いていた。

背中の部分に違和感を感じるや否や、追い風のように体が前へと進む。

自然の力をも覆すほどの力。

どんどん中心部から離れていく体は、次第に揺るかやかな水面へと辿り着く。

だが、勢いは止まらず、水の上にまで飛び出る。

背中の部分がどうなっているかはわからないが、ジェットのように風が出ているのだろう。

「止める方法がわからねえええ!」

力を制御する余裕はなく、海を直進し続けた先にあった陸の数メートル上を進む。

気がつけば目の前に壁がある。

このままではロベリアの体が粉々になる。

咄嗟に壁側に背を向けると、今度は壁に向って風を噴射し海に進もうとする。

『モード:零』

ロベリアの声とともに風は止み、大地へと飛び降りて足をつける形になった。

後一歩遅ければ、海に突っ込んでいただろう。

「ふう、何とか、なったな」

一息ついて、振り返る。

島の奥には進めないように、天に伸びる鉄の壁が邪魔をしている。

壁は延々と続いているようで、島を囲っているのかもしれない。

俺達がいる壁の外側は森も何もなく平地が広がっているだけで、暮らす事は出来そうにない。

島以外に本土の姿は見えず、海に囲まれているようである。

目立ってもおかしくない大きさがあるのだが、ニュースにはならないのか。

権力でもみ消している?

とにかく、早く島の中に入ろう。
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