妖魔04~聖域~
今はいいとしても、荒波の中に巻き込まれたロベリアの体はダメージが大きい。

体に戻った時に、辛い思いはさせたくない。

手当てをしてから戻さなければならない。

ロベリアのコアが抜けるかはわかったものじゃないしな。

ロベリアの体を負ぶったまま、壁伝いに走っていく。

何処まで続くのか。

しばらくして、大きな門へと辿り着く。

門の傍には受付所のような場所があり、コンビニ位の大きさである。

中に入ると、ガスマスクをした男がカウンターの向こう側に座っていた。

どこに行くのか気になるような風貌である。

だが、戸惑う必要も怯む必要もない。

男とのやり取りなど一瞬でしかない。

「この中に入るのはタダだよな?」

「訳ありか」

ガスマスクの内の目で観察している。

俺の姿を見ても冷静なところ、妖魔の存在は知っている。

「理由なんざどうでもいいんだよ。タダかどうか聞きたいだけだ」

「そうだが、入れば中々出られなくなる」

「百も承知だ。ところで、さっき、女と黒猫が入っていかなかったか?」

「広目の事か?」

「広目?」

そういえば、ラインも吟の事を広目と呼んでいた。

中では吟は広目で通していたのだろう。

「さっきは、広目さんと黒猫しか見ていないがな」

しかし、何で名前を変えたのか。

今はどうでもいい事だ。

「後、チビがここにこなかったか?」
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