妖魔04~聖域~
「朝っぱらから暑苦しい!」

逆エビ固めでグロッキー状態にし、俺は立ち上がる。

「少しは恥じらいを持て」

「何を言う、お前のためなら恥じらいなど捨ててやる」

効き目が弱かったのか、ゾンビのように立ち上がる。

「誰が頼んだ?」

「私が決めた」

「今日、一日寝てろ!」

エルボーで更に沈めて、歯磨きを実行した。

歯ブラシを立てかけようとすると、背後で歯ブラシを狙っている馬鹿がいる。

俺は歯ブラシを持って、風呂場から出る。

「朝から疲れる」

笹原の家にいる以上、俺が休める場所はない。

マンションから出ると、直射日光を浴びる。

里と外界は空だけ変わらない。

早く変えなければならないというのに、待機の命が出ている。

秋野は何を企んでいるというのか。

深入りしようにも、ポカをやらかせば里へと送還される。

そして、秋野の傍にいる『影』は容易に秋野の正体を暴かせないだろう。

何も考えずに近づけば、闇で殺される事は間違いない。

やるとなれば慎重に行動しなければならない。

今の状態では、何も上手くはいかない。

俺には情報が少なすぎる。
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