妖魔04~聖域~
「あ」

誰かがぶつかって倒れた。

俯いて歩いていたからだろう。

気配は感じてはいたが、どうでもいい存在だったので避ける気もない。

「ご、ごめんなさい」

倒れたのは自分だというのに謝っている。

相手を見ると、見覚えのある女だった。

「お前は、確か」

笹原妹の知り合いだったか。

名は葉桜千鶴。

妖魔と人間の混血だったはずだ。

「あなたは、美咲さんのお友達の方でしたよね?」

千鶴は立ち上がり、身なりを整えた。

「何を馬鹿な事を言っている」

「馬鹿な、事なんですか?」

「俺と笹原妹は何でもない。同じ種族というだけだ」

「種族、ですか」

理解が出来ているのかいないのか。

「お前には関係のない話だったな。次からは気をつけて歩け」

俺は千鶴の横を通り過ぎて歩いていく。

だが、千鶴からは、ろくでもない臭いを感じ取る。

「おい」

「え?」

千鶴も歩き去ろうとしたところだったが、俺に呼び止められて足を止めた。

「お前、退魔師が近くにいるのか?」

以前殺し損ねた退魔師の臭いだ。
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