妖魔04~聖域~
「良かった。じゃ、行きましょう」

笑顔になり、俺は千鶴の後を付いて周る事になった。

歩いてる途中、千鶴が俺の名前を聞いてくる。

「犬神刃だ」

「格好良い名前ですね」

「社交辞令と受け取っておこう」

「本心なんですけど」

千鶴はどんどん周辺地域を周っていく。

「えっと、普段使う商店街です」

人間が疎らに歩いている。

商店街というからには、両サイドに並んでいるのは店だろう。

「私の生まれる前から花屋とか本屋とかクレープ屋とか、色んなお店があるんです」

「ほう」

だが、ところどころ閉まっている。

「今、不景気ですから」

俺の視線が気になって、発言したらしい。

「不景気?何だそれは」

聞いた事のない言葉だ。

「同じようなお店が出来てしまうと、物が豊富な場所に行ってしまうんです。パソコンが普及して、更にネットで何でも買えるようになってしまいましたから」

千鶴が何を言っているのか、よく解らない。

ただ、解った事が一つ。

外界には物が豊富にあるのにも関わらず不景気という自体に陥り、物が売れない。

物が豊富にあるからこそ安い物に走り、買う物も限られてくる。

買い物に限らず、何故、無駄な物を増やそうとするのか。

その流れによって、俺達、妖魔の首を絞めていく。
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