妖魔04~聖域~
缶の蓋を開けて口に流そうとするが、落ちてこない。

「あの、振らないと駄目なんです」

「先に言え」

「ごめんなさい」

千鶴が沈むと、影に潜んでいる眼光が鋭くなる。

まだ見ているのか。

退魔師のイメージが段々、変な方向へ向っている。

「こうすればいいだろ」

掌を蓋代わりにし、高速で縦に振る。

しばらく振って、再び口に流す。

缶の中からゲル状の物が口の中へと移動する。

口内は冷やされるのだが、喉越しが最悪だ。

モチを飲まされているように、流れていかない。

「何で、こんな物を選別した?」

「数量限定だったんで、良いかなと」

「ろくでもない気の回し方をするな」

だが、最後まで飲まなければ、もったいない。

「ごめんなさい。今、お茶、買ってきます」

「余計な金を使うな」

走って行こうとする千鶴の腕を掴んだ。

「は、はい」

急に腕を掴まれて驚いている。

「それより、お前も食え。俺一人で食っていたら意味がないだろう」

何のために唐揚げを買ってきたと思っているのか。
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