妖魔04~聖域~
「美味しいですね」

千鶴は公園のベンチに座りながら、唐揚げを食している。

俺は、一体何をやっている。

焦っても仕方ないのは解る。

これが、選別された者の行動なのだろうか。

苛立ちと共にゲルパワー一万馬力の缶を八メートル程度先のゴミ箱に投げた。

途中、ゴミ箱の縁にぶつかり、外へ落ちようとする。

「あっち向いてホイ」

指を上に向け缶の回転を逆にすると、ゴミ箱に入った。

「凄い!手品ですか!?」

千鶴は、能力に驚嘆している。

自分が妖魔の血を引いているというのに、能力の事を知らないのか。

そもそも、自分が妖魔という事を知らないのではないのか。

退魔師を知っていて、妖魔を知らないはずがないのだがな。

退魔師という単語だけを知っていて、何をしているかを知らないという事もある。

父親が娘の前に現さないのにも、関係があるのか。

何故、俺が千鶴の事を考えなければならない。

「手品のような物だ」

「大掛かりな事を一瞬で出来るんですね!」

千鶴の親に従ったわけではないのだが、千鶴が笑顔を見せる。

影に隠れている親のリアクションが鬱陶しい。

「私、ずっと前からドジで、皆に迷惑かけてたんです」

「ああ」

ゲルパワーを買ってくる辺り、ドジなのは頷ける。

「だから、刃さんのように手品とか出来る人とか尊敬できるんです」

俺は組織のため、自分のために能力を使う。

決して、人間のために使うつもりは一切ない。
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