妖魔04~聖域~
「お前に聞きたい事がある」

「はい?」

「父親とは一緒に住んでないのか?」

「父はいません。顔も見た事ありません」

どういった意味のいませんなのか。

家にいないという意味なのか。

今まで一緒に暮らしてこなかったから父親という存在自体がありえないという意味なのか。

「そうか」

千鶴の家族は面倒くさい状態だ。

父親は退魔師であるという情報はわかるからいい。

あの男の情報も引き出しておいたほうがいいかもしれない。

「それで、兄妹はいるのか?」

「え?」

驚いている。

「兄妹なんて、いませんけど」

何かがおかしい。

俺の鼻は正常に動いていたはずだ。

間違いなく同じ血のニオイを発していた。

「あの、兄妹に関係するのかわかりませんけど、一つだけ、気になる事があるんです」

「何だ?」

千鶴自らが情報提供をしてきそうだ。

会って二回目だというのにも関わらず、俺に安心感を抱きすぎではないか。

「撮った記憶もないのに、私と見知らぬ人の写真があったんです」

どういう事だ?

若くてボケているという事はないだろう。

しっかりと会話が出来ているところ、千鶴の脳は正常に動いているといっていい。

「でも、懐かしくて、ずっと傍にいた人のような感じがするんです」
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