妖魔04~聖域~
デジャヴという言葉があるとすれば、千鶴に使うべきか。

今の問題は、あの男が何もかも握っている。

記憶がないのに、写真が存在している。

どう考えてもおかしな事だ。

だが、妖魔が存在しているのならば、可能だ。

あの男を探るべきなのか。

待機中の今、情報収集が主な仕事になる。

今いる地域が仕事場であり、遠方に赴く事も出来ないというのならば、近所で地道な作業をこなしておくべきだ。

「今、写真はあるか?」

「家に、ありますけど」

「今から持って来られるか?」

「家が近くなんですけど、来ますか?」

千鶴は学習能力のない馬鹿なのか。

俺は男で、初対面に近い。

生きていれば、誰しも汚れた物を見るはずだ。

そして、何が危険なのかを理解できるようになる。

「何でお前は俺に気を許している」

「美咲さんの知り合いですから、安心できると思って」

俺ではなく、美咲の知り合いだから安心できる。

純粋ほど時として面倒くさい物はない。

だが、頂ける物は手にしておいた方がいい。

「おいおい、そりゃ、あんまりだ」

影から出てきたのは、千鶴の父親だ。

「あなたは」

千鶴は俺の後ろへと隠れた。

「覚えていないと思うが、お前を宇宙で一番可愛いと思っているお父さんだ」

今の行動からして、千鶴は父親の顔を知っている。
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