妖魔04~聖域~
「保守派のほうが安全とは思うけどね」

母親は保守派である。

親が保守派だからといって、絶対に一緒だという事はない。

どちらになるかというのは個人の考えを尊重しているのだ。

そして、母親は自分の考えを押し付けては来なかった。

「待ち続けて崩壊を迎えるのはゴメンだ」

「里の外は危険よ。おっかない人間達がいっぱいいるんだから」

「人間に恐怖する?ありえないな」

妖魔からすれば、人間など取るに足らない存在だ。

どこに恐れる部分があるというんだ。

「どうしても行くの?」

「里のためだ」

里が危機に瀕しているのに何もしないのは愚か者だ。

保守派は何もせずに里から眺めておけ。

だが、外界の監視役の保守派だけには気をつけておいたほうがいい。

何か起こそうとしたら、止めにかかるだろう。

そして、保守派に里へと送還されることになる。

「じゃあ、これを持っていきなさい」

母親が箪笥から古びた箱を取り出すと、俺に持たせた。

「これは?」

箱を開けると、小さな座布団の上にコアが置かれている。

「父さんのよ」

「大事な人のモノだろう。仕舞っておけ」

これを持っていったら、母親が一人になる。

「心配しなくていいの。私の望みはあんたが生き延びてくれることだからね」

「だが」

「バカね。あんたが死んだら本当に一人になっちゃうじゃない」

「そうか」

父親の魂、母親の望みを受け取り体内へと送り込んだ。
< 33 / 330 >

この作品をシェア

pagetop