妖魔04~聖域~
母親は嬉しそうな顔をしていたが、目元には涙が浮かんでいた。

気付かないフリをして、夜食を取る。

燕の宣言どおり、から揚げが食卓の上には並べてある。

どこから情報を入手したのかはどうでもいい話だ。

家族水入らずで食事を進めようと思った矢先に、俺の膝の上には燕が座っている。

「テメエ、ぶっ殺すぞ」

力を入れる余り、箸が折れてしまう。

「こんなにも居心地のいい場所でご飯を食べるのは乙なものだな」

俺のから揚げがどんどん燕の口に入っていく。

「燕、元気?」

「元気元気、お前の美味いから揚げを食べに来てやったぞ」

燕と母親は友達のような間柄で、タメ口でも許される。

でも、あまりに罰当たりなことをすると母親に怒られる。

「美味いな。どれ、私が恋人のように食べさせてやるぞ」

から揚げを口当たりに持ってくる。

素早く食い、食卓から離すために燕の耳を引っ張っていく。

「風情もへったくれもないな」

箸に刺しているから揚げを頬張りながら、不満げに訴える。

「自分の家の飯はどうした」

「オニギリしかなかったんだ。おかずは必要だろう」

「オニギリだけでも置かれていることを感謝しろ!」

首筋を狙ってのフライングエルボーで口からから揚げを吐き出させた。
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