妖魔04~聖域~
里の中では長く生きている長老が椅子に座っている。

いつ死んでもおかしくないのではないかと思う程に力を感じない。

変鎖を受けていないので、人間の形はしておらずサイズが一回り小さい。

詳しく言えば、大きな一つ目から触手が何本も生えている。

「俺は外の世界に出ることが出来るんだな?」

「うむ」

一つ目のどこに発声する場所があるのかは解らない。

ただ、術の中では人語を話す事が出来るようになる物もある。

「里を出る暗号は?」

里を出る際には、暗号を言わなければ結界内から外へは出られない。

「その前に、お前にはやってもらわなければならない事がある」

「俺は選ばれて外に出る資格を得たんじゃないのか?」

素質を認められれば、外界に出られるかと思っていた。

「世界の状況は変わった」

「面倒くせえ」

某日、家に使者がきて、一通の手紙を置いて去った。

書面に記載されていたのは、任命と指令。

改革派に任命され、外界に出てからの工作を指令された。

具体的な案は外界にいる先遣の使者に聴取するしかないらしい。

改革派の考えに反対ではない。

人間達が好き勝手に面倒事を増やして、後始末をする事なく終わりを迎えようとするのが気に入らない。

最初はどちらにも所属していないのだが、任務に就いても問題のない年齢に達すると手紙が届く。

改革派、保守派の二つは本人の意思がどちらを向いているかで、使者が手紙を届けにくるのだ。

本人の意思は二つの内一つに向いているのだから、断る理由もない。

どうやって意志の傾きを調べるか。

噂話でも家系でも、調査すればわかる話だ。

指令は任命と同時に受けるのは稀な事だが、俺には外界に出る素質があったのかもしれない。

里の中の者に対しての指令は何年か一度、出される。

指令が出た時には世界を変える一つの要因になれる。
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