妖魔04~聖域~
「フギャ」

燕が猫の踏みつけられたような声を出すと、陰鬱な気分は少しだけ晴れる。

「はあ、はあ、疲れる朝なんて嫌いだ」

昨日から胃に物を入れてないせいで、動きが鈍くなっている。

「やっと飯にありつける」

食卓の上には、から揚げが乗っている。

「朝から濃くないか?」

「あんた、から揚げが食べたかったんじゃないの?」

昨日は一つしか食べてなかったので、勘違いしたのか。

「朝はもっと軽いもんで良かったが、食えるならいいんだ」

椅子に座ると、服を着た燕も隣の席に座る。

「自分の家に帰れ」

「私はお前の母親が作ったから揚げが大好きなんだ」

「燕、いい子だね」

二人して和んでいるが、自分の家の飯を食ってから来いと言いたい。

「ふざけんな!ここはテメエの家じゃねえんだぞ」

俺の叫びとは関係なしに、飛鳥が大量のから揚げを食べていく。

燕に構っているから、から揚げが食べられないんだ。

着席してて、から揚げを急いで食べる。

「お前、消化不良を起こしたいのか」

誰のせいだと思っている。

だが、燕に構っているなら、昨日の分まで食ったほうがいい。

「あんたがそんなにから揚げが好きだったなんて、作った甲斐があったよ」

母親の声も無視して一心不乱に飯を食い続ける。
< 42 / 330 >

この作品をシェア

pagetop