妖魔04~聖域~
「俺の目的を果たさなくちゃならない」

「これ、持ってきな」

母親が手渡してきたのは弁当箱だ。

「今日だけになるけど、ないよりは良いだろ」

「面倒な事しやがる。だが、ありがたい」

弁当箱を袋の中へ入れて、靴を履き立ち上がる。

「じゃあ、行ってくる」

「死ぬんじゃないよ」

「面倒な事を気にするな。俺は死なない」

背中越しで答えて、帰らぬ事になるかもしれない敷居から出る。

家の塀から出ると、冬狐の姿がある。

里の衣服を脱ぎ捨てて、人間界の服を着用している。

「お前も人間界に戻るのか」

「まあね」

待っているように思えたが、気のせいか?

「お前なら一人で行くと思ってたがな」

「たまには君と一緒に行動するのも気晴らしになるのよ」

本心かどうかは別として、目的が在るのは確かだ。

だからといって、別行動を取る気はない。

面倒だし、邪魔をするなら相手になればいいだけだ。

「別に構わん。面倒さえもってこないならな」

長老から聞き出した出口のある西へと向かう。

歩いていくと里の外れに出る。

辺りには家がなくなって、森に囲まれている。

「本当にここにあるのか」

更に歩いても、同じ風景ばかりが続いて出口など見当たらない。
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