妖魔04~聖域~
癪ではあるが、冬狐の背中を追いかけながら歩く。

無言のままだが、出口へと着実に向っているようだ。

しばらく歩くと、薄暗い森の中から光の遮断されていない場所へと出る。

「これは」

森から一歩出ると、地面がアスファルトで出来ている。

長い道が舗装された地面を見るのは初めてだ。

「何?うろたえてるの?」

「新鮮さに感動していただけだ」

アスファルトの左側が森だとすると、右側が里と似たような場所が広がっている。

田んぼや畑、家屋などがところどころにある。

「これが人間界か、あまり変わらないな」

「道路の真ん中にいると危ないわよ」

気付けば前から車が早いスピードで近づいてくる。

危機を感じて、端っこに寄る。

車はクラクションを鳴らして、通過していった。

「あれが車か」

箱が人を乗せて移動するとは不思議なものだ。

「君、明らかに動揺しすぎよ」

「気のせいだろ」

自分が代表者などに選ばれるとは思っていなかったので、人間界の事を詳しく知る必要がないと思っていた。

これなら、人間界のことをもっと学んでおくべきだったか。

「それでよく選ばれたものよね。まあ、私には関係ないからいいけど」

口では悪く言いながらも、歩きながら最低限のことは教えてくれる。

「常識は知っておきなさい。目的以前の問題よ」

アスファルトを歩いていくと、信号機が見えてくる。
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